枚方市・交野市に月2回配布される情報誌『マイライフ』の健康・医療コーナーを執筆しています。


地域と歩む医療


■ 2009年4月1日号 花粉症が治らない!?

■ 2009年3月1日号 緑内障 Q&A

■ 2009年2月1日号 視力表のCの意味

■ 2008年12月1日号 本当にドライアイ?


■ 2008年11月1日号 次世代のコンタクトレンズ

■ 2008年10月1日号 目の奥の痛み

■ 2008年9月1日号 目の色いろいろ

■ 2008年7月1日号 プールの季節

■ 2008年6月1日号 心因性視力障害

■ 2008年5月1日号 白内障の手術時期

■ 2008年4月1日号 花粉症対策

■ 2008年3月1日号 3つのコン

■ 2008年2月1日号 ザ・モード イン 眼の病気

■ 2007年12月1日号 遺伝性の目の病気

■ 2007年11月1日号 角膜の病気

■ 2007年10月1日号  メガネ派? コンタクト派?

■ 2007年9月1日号  お子さんが近視といわれたら

■ 2007年8月1日号  緑内障は早期発見が大切

■ 2007年7月1日号  光が見える

■ 2007年6月1日号  逆さまつげ

■ 2007年5月1日号  コンタクトを安全に使おう

■ 2007年4月1日号  花粉症によるアレルギー性結膜炎

■ 2007年3月1日号  涙があふれる

■ 2007年2月1日号  涙はいにしえの海

■ 2007年1月1日号  目の老化

■ 2006年12月1日号  目からウロコ 

■ 2006年11月1日号  ストレスが原因に!? 

■ 2006年10月1日号  紫外線と目 


■ 2006年9月1日号  目薬の副作用 

■ 2006年8月1日号  眼鏡について 

■ 2006年7月1日号  黄斑前膜について 


■ 2006年6月1日号  近視矯正手術

■ 2006年5月1日号  色の見え方

■ 2006年4月1日号  目のクイズ Q&A

■ 2006年3月1日号  目は体の窓

■ 2006年2月1日号  加齢とともに増える目の病気

■ 2006年1月1日号  眼にいい食べ物


■ 2005年12月1日号  視力の発達について

■ 2005年11月1日号  網膜静脈閉塞症

■ 2005年10月1日号  病診連携について


■ 2005年9月1日号  暑い季節に多い眼の病気

■ 2005年8月1日号  たかが目薬されど目薬

■ 2005年7月1日号  40歳すぎたら、緑内障検診を!

■ 2005年6月1日号  近視の話

■ 2005年5月1日号  虫が飛んでる?

■ 2005年4月1日号  コンタクト注意報!

■ 2005年3月1日号  花粉症の季節がやってきた!

■ 2005年2月1日号  こんなときは、急いで受診を!

■ 2005年1月1日号  ドライアイの予防と対策

■ 2004年12月1日号  糖尿病性網膜症

■ 2004年11月1日号  いわゆる老眼について

■ 2004年10月1日号  白内障の症状と治療

■ 2004年 9月1日号  眼科開業に当たって



眼科開業にあたって


 皆さん、はじめまして。今月からこの欄を担当させていただくことになりました北野と申します。先月まで執筆されていました泌尿器科の山田薫先生は大学の大先輩に当たり、また星ヶ丘厚生年金病院勤務時代から現在に至るまで、公私共にいろいろとお世話になっています。そのご縁で今回この大役を仰せつかりました。私の専門は眼科で、この9月1日から長尾で眼科医院を開設いたします。これからしばらく目の病気について、できるだけ分かりやすくお話していこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 さて、今回診療所を開設するに当たりまして、私なりに目標を掲げてみました。患者さんが満足して帰っていかれる診療所にしよう!安心してずっとかかれる診療しにしよう!ということです。そのためには、しっかりと病状を把握していtだき、それを改善させるにはどのような方法が必要なのかをきっちりと説明してご理解いただくことが大事です。
 以前勤めていた病院で、私が診察する何年も前から通院しておられる患者さんに、ある日突然、「ところで先生、私の病気は何ですか?」と聞かれて驚いたことがありました。
この患者さんはもう何年も通院し、投薬を受けながらも、ご自分の病状についての知識をほとんど持っておられなかったのです。
 これではいけないと思いました。そこで今回、診療所にファイリングシステムというコンピューターを導入しました。これによって、過去から現在に至るまでの眼底を含めた目の状態を画像として保存しておくことができ、患者さんにはご自身の病状の推移を理解していただきやすくなりますし、今後の治療方針も立てやすくなります。
 さて、次回からは少しずつ皆さんの興味をもたれそうなお話をしていく予定です。どうぞよろしくお付き合いください。


昭和62年奈良県立医科大学卒業、平成元年から2年、星ヶ丘厚生年金病院に勤務。その後、清恵会病院、国立奈良病院、東大寺整肢園などを経て、平成13年より再び星ヶ丘厚生年金病院医長。
 診療所では、場合により在宅医療、往診にも対応。電話予約、電話相談にも応じる。星ヶ丘厚生年金病院、そのほかの病院との病診連携を行っている。



白内障の症状と治療

 「最近眼がかすむ」「夜道が見にくい」「明るいところに出るとかえって見にくくなる」「光がまぶしい」などの症状をお持ちの方、もしかすると白内障かも知れません。実際、眼科を受診される方の半数以上が、程度はさまざまですが白内障を患っておられます。今回は、その白内障についてお話します。
 人の目は、よくカメラに例えられますが、カメラのレンズに当たる部分が水晶体です。何らかの原因でこの水晶体に濁りの出てきたのを白内障といいます。
 原因はいろいろとありますが、ほとんどの場合は白髪になるようなもので、加齢現象の一つです。中には、先天性のもの、糖尿病などの合併症や薬の副作用として起こる場合もあります。また、紫外線も白内障を進行させる要因になります。
 よく、「もう手術しないといけませんか?」と聞かれることがあります。基本的には、生活に支障がないうちは手術しなくてもよいのです。その場合、目薬によって進行を遅らせます。ただし、目薬は毎日つけることが大切で、時々つける使い方では効果はありません。また、水晶体の濁るスピードを遅くするもので、残念ながら症状を改善したり、視力を回復させることはできません。手術では、多くの場合、濁った水晶体を除去してそこに人工のレンズを挿入します。
 白内障をあまり我慢しすぎると、手術が困難になり、トラブルの可能性も出てきますし、白内障以外の病気がある場合は、手術方法を工夫したり、全身状態を診て手術の時期を決める必要があります。ですから、主治医とよく相談してから決められることをお勧めします。



いわゆる老眼について

 前回は白内障についておはなししました。今回は同じ目の老化現象の一つ、老眼についてお話します。
 日本では昔から、近くが見にくくなることを「老眼」と呼びますが、この呼び方は個人的にはあまり好きではありません。なぜなら老人とはまだまだいえない40歳代から老眼は始まってくるからです。今までは見えていた手元の距離が見えにくくなってきた場合、目の中のレンズが硬くなって調節能力が弱くなったせい(いわゆる老眼)なのですが、まだまだ若い方に向かって「老眼のようですね」とは、なかなか言いにくいものです。
 近視の人は老眼にならないとよく言われますが、これは間違いです。近視でも遠視でも同じように老眼になります。ただ、近視の人は元々近くにピントがあっているため、老眼になっていないように見えるのです。
 老眼になったら、その強さに合った眼鏡をかけなければなりません。近くが見えにくいのに無理をしていると、目の疲れ、肩こり、頭痛、吐き気などの症状に悩まされることがあります。いわゆる100円ショップにも老眼鏡は売られているようですが、人によって右目と左目の度数の差、乱視度、瞳と瞳の距離などはさまざまですので、やはり眼科で自分にぴったりの眼鏡の処方箋を受取られることをお勧めします。その際、レンズには近くを見るための専用レンズ、近くと遠くの2ヶ所にピントが合った2重焦点レンズ、遠くから近くまで連続的に見ることのできる多焦点レンズなどさまざまなタイプがあり、またそれぞれに長所と短所がありますから、眼科医とよく相談されてはいかがでしょうか。




糖尿病性網膜症


 失明原因の第一位をご存知でしょうか?
 答えは糖尿病性網膜症です。食べ物が欧米化され、また一方でストレスがたまりやすい社会環境の下、日本では現在700万人近くの糖尿病患者がいるといわれています。これは実に40歳以上の成人の10人にひとりが糖尿病を患っている計算です。
 糖尿病は、発病初期にはほとんど自覚症状がないため軽視されがちですが、全身に尾腰部合併症を引き起こすため油断はできません。特に「網膜症」「腎症」「神経症」は3大合併症として、重要視されています。
 高血糖が続くと、目の奥の網膜を走る毛細血管が詰まり、出血や腫れを引き起こします。初期には何の自覚症状もありませんが、放置しておくと手遅れになり、残念ながら失明に至ってしまうこともあるのです。
 まずは、適切な血糖コントロールが必要ですが、それにもかかわらず、中には悪化していく例もあります。その時は飲み薬によって出血を抑えたり、レーザーによって網膜を焼く治療が必要となります。
 大切なことは自覚症状のない時期から、定期的に眼底検査を受けて、手遅れにならないようにすることです。網膜に全く異常がなくても1年に1回、少しでも以上のある方は、その程度に応じて、1〜6ヶ月に1回は眼科で検査を受けてください。その際、内科での血液検査の結果を持参していただくと、大変参考になります。



ドライアイの予防と対策

新年明けましておめでとうございます。
 開業後初めてのお正月を迎えることとなりました。今年も、地域の方々に安心してかかっていただける診療所、満足して帰っていただける診療所をめざして、精一杯がんばっていこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。
 ところで、このところ寒さが一段と厳しくなってまいりました。暖房のきいた部屋でみかんでも食べながらテレビを見るのは、とても楽しいものですね。しかし、この季節、室内外の乾燥が原因で、目のほうにもいろいろなトラブルが引き起こされます。目が疲れる、ごろごろする、充血する、乾燥感があると思ったら突如として涙があふれ出すなどの症状に心当たりはありませんか。もしかすると、ドライアイかもしれません。ドライアイといっても、「目が乾く」と感じる人はそれほど多くなく、むしろ目の疲れとなって自覚される方が多いようです。
 涙は上まぶたにある涙腺から分泌され、目の表面を潤し、目頭にある涙点から排出されます。また、涙は3層構造になっていて、角膜に一番近い部分はムチンと呼ばれる粘液の層、その上が水の層、一番表面は油の層でできていて涙が蒸発するのを防いでいます。その役割の主なものは、目の表面の汚れを洗い流したり、ばい菌の感染を防いだり、角膜に酸素を与えたりすることです。車のフロントグラスをきれいにするウオッシャー液に置き換えるとよくわかります。ウオッシャー液が少なくなったり、成分が変化すると、フロントガラスに傷がつきやすくなりますよね。これと同じ状態がドライアイです。
 眼科では、目に潤いを与える目薬や、角膜の荒れを治す目薬が処方されたり、重症例では涙の排出口を塞ぐ「涙点プラグ」などで処置をおこないますが、家庭においても、加湿器などを置いて部屋の乾燥に気をつける、コンピューター作業中は瞬きの回数が極端に減るので適度に休憩を取る、コンタクトレンズの装用時間は短めにするなどの注意が必要です。




こんなときは、急いで受診を!

 今日は、眼科で急を要する病気についてお話したいと思います。
 昨年のことですが、「今朝1時間ほど前、朝ごはんの用意をしていたら、突然目が見にくくなってきたんです。」といわれて来院された患者さんがおられました。眼底を見ると、血管の一部が、白い固まりによってつまってしまっているようです。網膜動脈閉塞症という病気が最も考えられました。この病気は、網膜の血管が血栓(血の固まり)によってつまってしまい、急激に視力が低下したり、視野が狭くなったりする病気です。特にこの患者さんの場合は、過去に心臓の人工弁移植手術を受けておられたので、この血栓ができやすい状態なのでした。すぐに眼のマッサージやら、眼圧を下げる点滴やらを施し、あとは血栓を溶かす点滴を約1週間、うけていただくことにしました。先日来院されたときにはうれしいことに、つまっていた血栓はなくなり、見え方も回復しておられました。
 眼科医になってからもう15年以上になりますが、この病気で回復された例は本当に少ないのです。というのは、血管がつまってから、1〜2時間経過すると、網膜が死んでしまい、元に戻らなくなるからです。今回のケースでは、異常を感じてからすぐに来て頂けたことが、功を奏しました。ちょっと調子が悪いなぁと思っても、ついついほっておくことがありますよね。でも、病気によっては、それが命取りになることもあるのです。残念ながら、何の前触れもなく、突然起こることが多いのですが、なかには発症前のある時期、網膜の瞬間的な虚血(血が供給されなくなること)によって、ほんの数秒間だけ眼の前が暗くなるといった前駆症状を伴う場合もあります。そんなときは、できるだけ早くお近くの眼科を受診してください。
 


花粉症の季節がやってきた!

 眼はクシャクシャ、鼻はムズムズ、のどはイガイガ。春の訪れを告げるこんな症状はでてきていませんか?いまや国民病ともいえる花粉症の季節がやってきました。今年は、昨夏の猛暑の影響で、花粉の飛散量が昨年の20倍とも30倍ともいわれています。
 眼科で花粉症といえば、花粉が原因で起こるアレルギー性結膜炎のことをさします。 「アカンベー」で見える瞼の赤いところから黒目のふちまでを覆っているのが結膜です。結膜は、涙と瞼の縁から分泌される脂様の物質でいつもぬれていて、角膜が乾いて傷つきやすくなるのを防ぎ、眼球の動きを滑らかにするという重要な役割をはたしています。ところが、いつもぬれているので花粉がくっつきやすく、鼻、のどの粘膜と同様に、アレルギー反応の多発地帯となってしまうのです。
 眼の症状は、かゆみ、充血、めやにの他に、眼の腫れがあります。「子供の目が急にはれてきたんです!」「白目がゼリーみたいにふくらんでいるんです!」といって、びっくりして来院される方も多いのですが、これは目がかゆくてこすったためにおこるアレルギー反応で結膜浮腫とよばれるものです。しばらくすると引いてきますが、このような症状が見られるときはできるだけ目をこすらないように注意してください。冷やしたタオルなどを眼の上に置くと、幾分かゆみがおさまってきます。
 予防は、まず第一に風の強い日はなるべく外出を控えることです。外に出るときは、少しでも花粉の飛入を抑えるためにメガネやマスクを着用されたほうがいいでしょう。外出から帰ったら、衣類をはたき、花粉を屋内に持ち込まないようにしてください。また、洗眼をして花粉を目から洗い流すことも効果があります。
 治療としては、安全な非ステロイド系の抗アレルギー薬の点眼が主流です。これらは花粉が飛散する2週間くらい前から点眼を開始すると、飛散期間中の症状を軽減してくれます。症状の強い方には、ステロイド薬の点眼を用いますが、効果が大きい反面、長期に投与し続けると副作用が現れることもありますので、それらをチェックしながら投与することが大切です。
 以上のことに注意しながら、何とかこの季節を少しでも快適に過ごしてください。



コンタクト注意報!


 先日、長年コンタクトを愛用されていた方が、「最近、コンタクトをしてもはっきり見えなくなってきたんです」といって受診されました。診察してみると、眼球の黒目の部分(角膜)が白く混濁してきています。このまま放置すれば、角膜の濁りが元に戻らなくなって、視力が回復しない可能性もあります。すぐにコンタクトの中止をお願いしました。
この方は、最近主流の使い捨てタイプのコンタクトレンズを使用されていたのですが、よく話を聞いてみると、使用期限を守っていないとのことでした。コンタクトレンズには、ソフトタイプとハードタイプがありますが、最近は、装用感覚がよく、手間のかからない使い捨てのソフトタイプを使用される方が大変増えているのが実情です。
 ソフトコンタクトレンズは、角膜にぴったりと張り付いた薄い膜のようなものです。目にとっては、首からすっぽりとビニール袋をかぶされたような状態にあるわけです。角膜は、瞬きに伴って入れ替わる角膜とレンズの間の涙を介して酸素を受け取り呼吸しているわけですが、涙の量自体が少なかったり、パソコンの作業などで瞬きの回数が減ったり、コンタクトレンズ自体の劣化で酸素透過性がおちたりすると、窒息状態に陥り、濁って傷がついたり、悪くするとばい菌が感染したりします。また、季節柄現在多くの方が悩まされているアレルギー性結膜炎においても、症状のひどいときに無理してコンタクトを装用し続けると、期限前にもかかわらずレンズが白濁して見づらくなってきたり、アレルギー症状がさらに悪化したりします。このようなときは、レンズを中止したり、レンズの種類を変更したりして様子をみる必要があります。
確かにコンタクトレンズは、大変便利なものです。ただし、あくまで医療器具ですから、正しく使って上手に付き合っていってください。



虫が飛んでる?

 明るい所で白い壁、青空などを見たとき、目の前に虫や糸くずなどが飛んでいるように感じたことはありませんか?このような症状を医学的には「飛蚊症」と呼びます。
先日60才くらいの男性が、「以前から、目の前に黒い点が飛んでたんやけど、昨日からえらい増えてきおってなぁ」と、来院されました。目薬で瞳を大きくして眼底を調べると、網膜の一部に穴があいており、その上を走る血管の一部が破れて出血を起こしています。そのまま放置しておくと、網膜剥離に進展する可能性が高かったので、早速その穴の周りをレーザーで焼き固めました。つまり、この方の場合は飛蚊症が、網膜剥離への警笛となったわけです。
 飛蚊症を引き起こすこの黒い点は、目の中の硝子体と呼ばれるゼリー状の透明な部分に何らかの原因で‘濁り’が生じ、その濁りの影が網膜に映っておこります。この飛蚊症には、放置しておいてよいタイプと、治療を必要とするタイプの2つがあります。後者には、硝子体出血、網膜裂孔、網膜剥離やぶどう膜炎などがあり、その中でも網膜剥離は硝子体の液化がすすむ50代が好発年齢です。50才を過ぎるころになると、眼の中の硝子体が徐々に収縮し、網膜からはがれてきます。このとき網膜が引っ張られ、弱い部分に裂け目が生じてしまうことがあるのです。若い人でも、強い近視の方には同様のことが起こり易くなります。
 眼底検査の結果、生理的なものと判断された場合、あまり気にすることはありませんが、残念ながら症状をなくす方法はありません。上手に付き合っていくしかないのです。ただし、飛んでいるものの数が増えたり、大きさが変化した場合は、再度精査したほうがよいでしょう。
 


近視の話

 学校では検診の時期を迎えました。視力低下はいろいろな原因で起こりますが、今回は学童期に多い近視についてお話したいと思います。
 物をはっきり見るためには、目に入った光線が網膜にぴったりと像を結ぶことが必要です。目の中の水晶体と呼ばれるレンズが、遠くを見る時には薄くなり、近くを見る時には厚くなって、ピント合わせをしてくれます。このレンズを厚くする筋肉の緊張が解けずに、視線を遠くに移しても像の結びが網膜の前方にとどまると、はっきり見えにくくなります。この状態を仮性近視といい、近視発生の第1段階であるとも考えられています。勉強、テレビゲーム、読書など、長時間の近見作業が原因となります。
 また、成長とともに眼球自体が大きくなって水晶体の屈折率との釣り合いが取れなくなることを軸性近視といい、これには遺伝が関与しているといわれています。仮性近視の時期には、レンズを厚くする筋肉の緊張を取るために、目薬や訓練を行うことがあります。これらを行っても残念ながら視力が回復しない時は、真の近視と診断します。
 教室の黒板の文字を不自由なく見るには、最前列で0.3以上、最後列なら0.7以上の視力が必要です。このことを考えながら、眼鏡を処方します。
 よく言われるように、眼鏡をかけたりはずしたりすると、視力が落ちるというのは間違いです。最初は授業中だけでもかまいませんから、かけるように指導していきます。今までぼやけていたのがうそのように、はっきりすっきり明るい世界が広がって、きっと勉強にも集中できますよ!



40才過ぎたら、緑内障検診を!

 先頃行われた調査の結果、驚くべきことに「40歳以上の17人に1人は緑内障」という結果が明らかになりました。しかも緑内障の患者さんの約8割は治療を受けていないというのです。日本人の失明原因でも、糖尿病性網膜症についで第2位となっています。
 では、緑内障とは一体どんな病気なのでしょうか? 眼球はボールのような形をしており適度な硬さを保っていますが、この硬さを眼圧といいます。この眼圧が高すぎたり、視神経が弱かったりすると、視神経に障害がおこってしまうのです。その部分の視野は徐々に欠けていき、最後には失明してしまうこともあります。進行してから発見されても、一度狭くなった視野は、たとえ手術をしても元に戻ることはありません。ですから、早期発見、早期治療がどれほど大切か、わかっていただけると思います。
また緑内障には、突然眼圧が高くなり目が見えにくくなる急性のタイプと、じわじわ進行していく慢性のタイプがあります。しかし、眼圧の高い人すべてが緑内障になるわけではありませんし、逆に眼圧が正常範囲内なのに緑内障になる人もいます。これを正常眼圧緑内障といい、日本人に最も多いタイプの緑内障です。残念ながらその性格上、なかなか自分では気づきにくいのですが、最近人間ドックなどの検診で発見されることが多くなってきており、この病気に一番大切な早期発見、早期治療につながってきていることはとてもうれしいことです。
 たとえ緑内障でも、適切な治療を受けることにより、生涯何の不自由もなく生活される方もたくさんいらっしゃいます。ですから、40才過ぎたら一度検診を受けられることをお勧めします。


たかが目薬、されど目薬

 今月は、眼科の治療の中心となる正しい目薬のさし方についてお話しようと思います。
目薬をさした後、のどの奥に苦いものを感じたことはありませんか? 目薬は、涙の流れと同様に、目の表面(角膜・結膜)から、涙点→涙嚢→鼻涙管を通って、最終的には、鼻〜喉に流れていくのです。そのため、目薬の種類によっては、全身に影響を与えることがあります。これを防ぐために、目薬をさした後は、最低1〜2分間、目頭を押さえて、目を閉じていたほうがよいでしょう。また、2種類以上の目薬を続けてさすときは、5分以上、間をあけてください。さす順番は、薬局で指導がある場合はそれを守りましょう。
 よく「寝る直前に目薬をさしても大丈夫ですか?」と聞かれますが、これは問題ありません。1回のさす量は、目の吸収量から考えて1〜2滴で十分、それ以上さしても外に流れてしまうだけです。あふれた目薬は清潔なティッシュなどで拭き取ってください。
 冷暗所保存の指示がある場合はそれに従い、特に指示がなくても直射日光を避け、なるべく涼しいところに保管しておくほうがよいでしょう。ほとんどの目薬の中には、防腐剤が含まれていますが、人によっては、これらの防腐剤に対して、アレルギー反応を起こし、充血や目やにが出るときがあります。こんなときは、なるべく早く眼科医に相談、診察を受けてください。
  一番むずかしいのは、お子さんへの目薬のさし方ですが、嫌がるのを無理にさしても涙で流れてしまいます。このときは、目をつぶらせて目頭に1滴落とし、まばたきをさせると自然に目の中に入っていきます。
 「たかが目薬、されど目薬」なかなかむずかしいものですが、がんばってみてください。


暑い季節に多い眼の病気

 早いもので、開業して1年がたちました。本当にあっという間でしたが、このところようやく自分のペースがつかめかけてきたように感じています。ここで改めて、患者さんのために何ができるのか、患者さんの望んでいることはどういうことなのか、考え直しながら、もう一度気を引き締めて診療していきたいと思います。
 さて、夏もようやく終わりが近づいてきたとはいえ、まだまだ暑い日が続いています。
今日は、暑い季節に多い眼の病気についてお話したいと思います。
 夏といえばプール、というお子さんも多いことでしょう。このプールの水を介してウィルスが感染し、いわゆる“プール熱”と呼ばれる結膜炎を引き起こすことがあります。病名からわかるように、発熱やのどの痛みを伴い、かぜのように全身がだるくなって下痢をしたりします。通常、発病から7〜10日でよくなってきますが、結膜炎が治ってからもプールはしばらく入ってはいけません。結膜炎を引き起こしたウィルスが腸管から肛門に出てくるからです。流行性角結膜炎(いわゆるはやり目)などとともに、学校伝染病にしていされていますので、医師の許可が出るまでは、学校を休まなければいけません。
 また、最近「瞼がはれてきた」と、受診される患者さんが増えています。これは多くの場合、“麦粒腫”(いわゆるものもらい)というものです。まつげの縁には汗を分泌したり、脂を分泌したりする腺があります。ここに細菌が感染して、炎症をおこしたり、化膿したりしたもので、どうしても汗をかく季節に多くなります。ほとんどは抗生物質の目薬や塗り薬で治りますが、ひどいときは内服薬を飲んでもらったり、切開して膿を出してやることもあります。いずれにしろ、放置しておくよりも、早めに治療を開始したほうが、治るのも早いようです。



病診連携について

 病診連携という言葉を耳にされたことがありますか?
 基幹となる大きな病院と、町の診療所が協力し合って、一人の患者さんを診ていくことです。
たとえば、日頃使っている電化製品の調子がおかしいとき、いきなり工場に品物を持っていく人は少ないでしょう。まず、近所の電気屋さんに見てもらい、もしも工場にしばらく預けて修繕する必要があるならば、その手続きをとってもらいますよね。
それと同じように、診療所で患者さんをみていくうち、もっと詳しい検査が必要と感じたり、入院の上、治療や手術が必要だと考えたとき、それが可能な病院に責任を持ってこちらから紹介させていただくのです。紹介先の病院は、必要な検査、治療、手術などを行ったのち状態が落ち着いたら、再び診療所に逆紹介して経過を見てもらいます。患者さんにとっても、そのほうが待ち時間などのロスが少なくてすみますし、かかりつけの診療所と、何かのとき頼りになる病院の両方があったほうが、より安心でしょう。診療所、病院にとっても、それぞれの機能を考える上で、一番合理的な方法です。
  さて、私も1年前に開業して以来、紹介される側から紹介する側へと、立場が変わりました。紹介先は患者さんの希望・症状によりさまざまですが、今まで勤務していた病院が近くにあり、そこには看護士さんをはじめ、病院のスタッフも気心の知れた人たちが多いので、より安心して紹介することができます。また、時間の許す限り、できるだけ病棟へ患者さんのお顔を見に行くようにしています。患者さんの「よくなりました。」という笑顔を見ると、とてもうれしくなります。



網膜静脈閉塞症

 網膜静脈閉塞症、難しそうな名前ですね。でも、眼底出血という病名なら多くの方が耳にされたことがあるでしょう。実は、この眼底出血の原因として、糖尿病網膜症とともに大きな比率を占めているのが網膜静脈閉塞症なのです。ただし、眼底出血だけでなく、そのほかにもいろいろな病気を目にひき起こすので、今回はこの病気についてお話します。
 網膜静脈閉塞症とは、文字通り網膜の静脈がつまる病気です。原因としては、高血圧や動脈硬化があげられます。静脈がつまると、そこを流れていた血液の行き場がなくなり、あふれだします。これが眼底出血や、網膜の腫れをひきおこすのです。
症状は、どの部分の血管がつまったかによって大きく異なりますが、出血した部分に相当する視野が欠け、網膜の中でも視力にとって一番重要な黄斑部に出血や腫れが及ぶと、視力が低下します。また、発症後3ヶ月から1年以上たち、症状が落ち着いてくると、硝子体出血や緑内障、網膜剥離などの合併症が引き起こされる場合があります。
 治療としては、まず閉塞した血管に血流を再開させるためのお薬を投与します。これに続いて出血や腫れをできるだけ早く消失させるため、レーザーで網膜を焼く場合もあります。また、再発防止のために血液をさらさらにするお薬をしばらく飲んでいただくこともあります。症状が落ち着き、慢性期に入ると、治療の目的は合併症の予防に移ります。合併症発症の可能性はないか定期検診を行い、同時に、静脈閉塞が起きる最初の原因となった高血圧などの病気を治療して、再発を防ぐことも大切です。



視力の発達について

 生まれたばかりの赤ちゃんは、どのくらい目がみえていると思いますか?
実は、生まれた直後は光や目の前で動くものがぼんやりと見える程度なのです。その後1歳になるまでに0.1から0.2くらいになり、3歳で0.6から0.7くらい、そして5歳ころにはほぼ1.0にまで成長します。逆に言えば、この期間に何らかの理由で眼の発達が妨げられると、一生視力がでにくい“弱視”とよばれる状態になってしまうのです。後で遅れを取り戻すことは、非常に困難です。
 ですから多くのお子さんは3歳児検診で生まれてはじめて視力を測定することになるのですが、この検査は目が順調に発育しているかを知るために大変重要です。
 視力の発達をそこなうものとして、遠視・近視・乱視などの屈折異常によるもの、斜視によるもの、白内障やまぶたの下垂、眼帯などの目に十分な光が入らない状態などがあげられます。    
 家庭で幼児の眼の異常を早く見つけるコツは仕草や動作、外見に気をつけてみることです。ものを見るとき目を細める、首を傾ける、顔を近づける、片方の目を隠すと嫌がることはないか。目が内側、あるいは外側によっていないか。まぶたが下がっていないか。このほか、動作が鈍い、飽きっぽい、疲れやすいなども注意が必要です。
 子供は残念ながら、大人のようにはっきりと異常を訴えることはできませんが、何らかの信号は必ず発しているはずです。それを上手に汲み取ってあげてください。何か気にかかることがあれば、どんなことでも、一度お近くの眼科医にご相談ください。



目にいい食べ物
 
 明けましておめでとうございます。無事、開業2年目の新春を迎えることができました。これからも、微力ながら少しでも地域の皆様のお力になるよう、がんばっていきたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。
 さて、お正月にご馳走をいっぱい食べる方も多いことでしょう。「目をよくするには何を食べればいいですか?」よくこんな質問を受けます。
 結論から言えば、「これを食べれば目がよくなります。」とはっきり断言できるものはありません。ただし、目にいいだろうと推測されるものはいくつかあります。
 昔から、ビタミンAが不足すると、夜盲症(暗いところで目が見えにくくなる状態)になるとよくいわれました。ものを見るときに必要な、網膜上のロドプシンという物質をつくるのにビタミンAが必要なのです。
 また、ルテインという物質は、網膜に損傷を起こしやすい青色の光を吸収する働きがあり、加齢黄斑変性症という網膜の病気の進行防止に効き目があるといわれています。
 最近よく耳にするブルーベリーですが、これはアントシアニンという物質を多く含んでいて、これが目にいいといわれています。視神経のロドプシンは加齢とともに減少しますが、その再合成を助けるのがアントシアニンなのです。
 この他にも、視力向上にDHA、疲れ目にビタミンB、白内障の予防にビタミンCなどなど。
 このところの健康ブームでいろいろなサプリメントが出回っていますが、効くかどうかは個人差があるようです。ただひとつ確かにいえることは、眼の病気をひきおこしやすい糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病を予防するために、肉類・高コレステロール食品・糖質・塩分は控えめにし、魚・穀物・野菜中心のバランスのとれた食事を心がけた方がよいということです。



加齢とともに増える目の病気

 「年齢とともに目が弱ってきた」とはおそらく誰もが感じることのひとつでしょう。
加齢に伴う目の病気はいろいろありますが、最近もっとも注目を浴びているのは、“加齢黄斑変性症”です。米国では、50歳以上の失明原因の1位で、日本でも年々増えてきています。今まで、残念ながらこれといった治療法がなく、悪くなっていくのを手をこまぬいて眺めているしかなかったのですが、近年新しい治療法が登場したのです。
 加齢黄斑変性症とは、網膜の中心にあり視力にも影響する“黄斑”と呼ばれるところに、もろい新生血管が生えて出血したり、網膜が萎縮したりする病気です。
 症状としては、視野の中心がゆがんで見えたり、暗くなったりします。ただし、最初は片方の目に起きて症状も軽いため、見過ごされることも少なくありません。
従来の治療では、レーザーで新生血管を焼き固めたり、新生血管を外科的手術でとってしまったりしていましたが、一昨年5月に光線力学療法という治療法が新たに承認されました。これは、光に反応する薬を体内に注射し、網膜の病変部に弱いレーザーを当てて薬を活性化させ、新生血管を壊し退縮させてしまう方法です。残念ながら視力の改善はそれほど期待できませんが、7〜8割では進行を抑えることができます。
 少しでも気になる方は、片方の目を閉じて、窓の桟などの直線を見つめゆがんで見えはしないか、本を読んだとき中心部がぼやけて見えはしないか、片目ずつ確かめてみられるとよいでしょう。もしも異常が見つかったら、かかりつけの眼科医に相談してみてください。



目は体の窓
 
「目は口ほどにものを言い」とはよくいったものです。今回は、目でわかる全身病についてお話しようと思います。
先日、「片方の目がこのところ見にくくなってきました。」といって受診された方がおられました。眼底検査の結果、片方の視神経の色が蒼白であったため、MRIをとって調べたところ、脳腫瘍が見つかり、手術することになりました。また、別の患者さんは、ぶどう膜炎という病気にかかり、その原因を調べるために血液検査したところ、重症の糖尿病を気づかずに放置していたことがわかりました。このように、眼の症状から全身のほかの病気が見つかることもまれではありません。
最近、生活習慣病としての高血圧・高脂血症が増えています。これらは病期が進むと、全身の血管が細く硬くなり、脳梗塞や脳出血をひきおこす危険が高くなります。しかし実際に血管の状態を直接目で観察することができるのは、人間の体の中で、眼底が唯一の場所なのです。そのため、高血圧・高脂血症のコントロールの状態を推測するのに、眼底検査が行われます。眼底検査の結果、動脈硬化性変化が強い場合は、より厳重な血圧のコントロールが必要となるわけです。
そのほか糖尿病でも、定期的な眼底検査は重要です。糖尿病のコントロール状態が悪かったり、逆に急激な血糖値の降下でも、眼底出血が引き起こされます。深刻な視力障害に陥ることも少なくありません。
このように、いろいろな病気の診断・治療の一環として、「目は体の窓」としての役割を担っているといえるでしょう。



目のクイズ Q&A

今回は、趣向を変えて目に関するクイズをお出ししてみます。さて何問正解できるでしょうか?
その1。花粉症の季節になりました。外出先から帰って目を洗う方も多いでしょう。目は洗ったほうがよいのでしょうか?実は、むやみに目を洗うことは、あまりお勧めできません。涙には、油やムチンといった物質が含まれていて目を保護してくれているほか、ばい菌から目を守ってくれる物質も多く含まれていますが、この涙までもが洗い流されてしまうからです。目を洗うのはプールの後や、薬品・異物が目に入ったとき以外は、余程目がゴロゴロするときだけにしたほうが無難です。。
 その2。目薬はさせばさすほど、目にいい?これも間違いです。ほとんどの目薬には防腐剤が含まれており、回数が多すぎたりすると、この防腐剤によってアレルギーがひきおこされたり、角膜に傷ができたりすることがあります。きちんと決められた回数を守りましょう。
 その3。コンタクトは、酸素透過性が高いほど目にいい?そうとは限りません。確かに酸素が多く取り込めると目の負担は減りますが、酸素透過性が高いほどレンズに汚れが付きやすくなります。汚れが付着すると酸素透過性も低下しますし、アレルギーなどの異常もきたしやすくなります。目やにの多い人、レンズが汚れやすい人にとっては、逆に目の負担になることもあるのです。
 このように、目に良かれと思っていたことで間違っていること、結構あるでしょう?


色の見え方

 人間にはそれぞれ個人差がありますが、色の見え方にも人によって違いがあります。
すべての色は、光の3原色といわれる赤、緑、青の3つの光の組み合わせで作られていますが、人によっては、それらの色を感じ取る視細胞の量が少なかったり、十分に機能しない場合があるのです。
一番頻度の多いのは、赤緑異常といって、赤と緑が判別しにくいケースです。決してまれなものではなく、男性では20人に1人、女性では500人に1人が、これに相当します。伴性劣性遺伝という遺伝形式をとるために、男性が圧倒的に多いのです。
 具体的には、緑の木々の中の赤い実がわかりにくい、熟れたトマトとまだ緑色のトマトを区別しにくい、黒板に書かれた赤や緑、青の色チョークの文字が見えにくい、鉄道路線図を一目で見分けることが難しい、などです。
 ここで、大切なのは、たとえ異常があっても全く色がわからないのではなく、異常の程度も人によって異なり、日常生活には支障がない場合がほとんどだということです。大抵の場合、運転免許も問題なく取得できますし、電車の運転士やパイロット、印刷業、カラーコーディネーターといった色覚で適正が決まる特殊な職種を除いて、制度的な障害はほとんどなくなってきています。
 色覚異常は残念ながら治療することはできませんが、本人の特性のひとつと考え、指導・ケアにあたっていくこと、色覚異常の人にとっても暮らしやすい社会となるように環境整備をおこなっていくことこそが大切だと考えます。



近視矯正手術

 最近、話題になっているLASIKと呼ばれる近視矯正手術は、約10年前アメリカで開発されました。その後、機械の進歩などによって、より安全に広くおこなわれるようになりました。あのタイガーウッズが受けたことでも有名ですよね。
 めがねやコンタクトレンズなしで、はっきりものが見えたらどんなにいいでしょう。また、仕事の都合でどうしてもめがねが着用できない人たちもいます。そんなとき、近視矯正手術を受けた方から、「めがねなしでとてもよく見えて、まさに世界が明るくなりました。」という声を聞くと、手術も重要な矯正方法のひとつになったのだなぁと感じます。
 手技は比較的簡単で、点眼麻酔の後、角膜の表面を薄く削ってふたを作成し、そのふたを開いてからレーザーを照射、ふたを元に戻して終わりです。時間にして約15分です。
 一方で、やはり手術ですから、頻度は少ないとはいえ、合併症もあります。そのほか考慮していただきたいのは、めがねやコンタクトレンズと違い、一度手術を受けたら、手術前には戻らないということです。たとえば、軽い近視の方は老眼が始まっても比較的手元はよく見えますが、若いときに手術で近視を治してしまうと、40代半ばから、老眼で近くが見えづらくなってしまいます。手術は中年以降のことも考えることが大切です。また、20歳未満の人、視力が安定しない人、角膜が薄い人、目の病気を持っている人などは、受けることができません。値段が抑えられてきたとはいえ、いまだ高額で、医療保険がきかないということも、選択する際の材料になるでしょう。
 手術を希望される場合、複数の眼科医の診察、アドバイスを受けてから最終的に受けるか受けないかを決定されるのがよいでしょう。



黄斑前膜について

「物がゆがんで見えるようです。」
といわれる中高年の方の眼底を観察すると、網膜の中心の黄斑部と呼ばれるところに、薄いセロファンのような膜が張っていることがあります。これを“黄斑前膜”といいます。
 眼球の中は硝子体という透明なゼリー状の物質で満たされていますが、この硝子体が年とともに少しずつ液体に変化して体積が小さくなっていき、しまいには網膜から離れていきます。このとき、網膜と硝子体の癒着が強いと、うまくはがれないで硝子体の一部が網膜に張り付いたまま残ってしまうことがあるのです。この残った硝子体が元になって黄斑前膜が形成されます。
 最初のうちは自覚症状もないことが多いのですが、徐々に進行すると、膜がぶあつくなって下の網膜を引きつらせ、シワを形成したりします。カメラのフィルムに当たるところにシワができるため、物がゆがんで見えたり、視力が落ちたりするのです。
 残念ながら、薬で治すことはできませんが、進行はゆっくりであることが多いため、自覚症状が軽いうちは経過観察をします。病状が進行し、ゆがみが気になったり、視力低下が進んできたら、手術をおこないます。手術では、まず硝子体を取り除いた上で、網膜表面にはった膜をピンセットではがします。ただしあまり進行してからだと、術後も視力が戻らなかったりゆがみが解消しないケースもありますので、眼科医とよく相談しながら手術時期を考えていくのがよいでしょう。


眼鏡について

最近眼鏡がブームです。TPOやその日の気分によって、いろいろな眼鏡をかけ替えて楽しむ人が増えているようです。洋服のように、眼鏡も‘着替える’時代になったのですね。
一方で、初めて眼鏡を作るひとから、どういう眼鏡を作ったらいいかと、相談を受けることもよくあります。なぜなら、眼鏡ほど価格面で、差が大きいものも少ないからです。安いものではいわゆる百円均一で売られている老眼鏡から、上は何万円もする高級品まで。これは個人的な意見ですが、眼鏡を単によりよくものを見るための道具と考え、なおかつ実際にかけてみて疲れないのなら、値段はあまり関係ないと思います。ただ、百円均一で売られているものはあくまで規制品なので、左右眼の差であるとか、乱視度数であるとか、瞳孔間の距離など個人差のあるものについては全く加味されていません。そのため、かけていて目が疲れるとか、ピントがぼやけるようなら、やはりその人にあった眼鏡度数で眼鏡を作りなおす必要があります。また、紫外線カットやレンズの厚さが薄くなるよう加工したものなどもあり、白内障で光がまぶしく感じる場合や、度数が強く通常ではレンズがぶあつくなって周辺部で歪みが生じてしまう場合などでは、威力を発揮します。
遠近両用の眼鏡に関しては、便利である半面、「階段の上り下りが怖くて・・・」などという声もよく聞きます。確かに、遠近両用の眼鏡は慣れるまで多少時間がかかりますし、かけ始め年齢が高いと余計と慣れにくいようです。できたら50歳くらいまでにかけ始めたほうがいいでしょう。



目薬の副作用


どんなお薬にも、いい面とそうでない面があります。目薬だって例外ではありません。
たとえば、眼科の診察でよく使われる散瞳薬は、眼底の精査をするためになくてはならないものですが、診察が終わったあとも3〜4時間瞳孔が開いたままになるので、手元が見にくかったり屋外でまぶしく感じたりします。また、ステロイドという薬は上手に使うととてもすばらしい威力を発揮する優れものなのですが、あまり漫然と長期にわたって使い続けると、白内障や緑内障を引き起こすことがあります。緑内障の治療で使われる目薬の中にも、視野が暗くなる、まぶたについたまま放置すると黒ずみを生じる、喘息や心不全が悪化するなどの副作用を生じる可能性のあるものもあります。
点眼後のもっとも多い訴えに“しみる”というものがありますが、単に“しみる”というだけでは、そのお薬がよくきいているからとも、逆に目にあわないからとも一概にはいえません。一般に、点眼直後しみるだけならば問題はありませんが、30秒以上たってもしみ続けるときや充血が続くときは、角膜に傷が生じている可能性があります。そのほか、点眼後充血やまぶたの腫れがおこり、点眼を重ねるごとにひどくなっていくときには目薬に対するアレルギーが考えられます。
副作用を最小限に抑え、効果を最大限に引き出すべく、上手に目薬を使っていくためにも、点眼後何らかの気になる症状が認められた場合には、速やかに点眼を中止し、医師に相談してみてください。



紫外線と目

 あまり長時間にわたって紫外線を浴び続けると、日焼けはもちろん、しみ・そばかすができたり、皮膚がんになりやすくなる。このような、紫外線が皮膚に及ぼす悪影響については比較的よく知られています。ところが、目と紫外線の関係については意外と知られていないようです。
 雪山登山やスキーに行ったとき、目が充血したり、目に大変な痛みを感じた経験のある方もいるでしょう。これは「雪目」という状態で、高度の関係や、雪の反射により、普段より強い紫外線を浴びることによって、角膜の表面に無数の傷ができたことが原因です。角膜は知覚が発達しているため、たとえ小さな傷でも大変な痛みを生じるのです。同じような症状が、溶接などの仕事でおきることもあります。また、紫外線は白内障を進行させる要因のひとつでもあります。そのほか、「翼状片」という、結膜側の組織が黒目に向かって鳥の翼のように伸びていく病気も、紫外線によって進行するといわれています。
 では、目を紫外線から守るためにはどうしたらよいのでしょう?もっとも手軽なのは、外出時に紫外線をカットできるめがねやサングラスをかけること、つばの広い帽子をかぶること、また最近では、紫外線カットの機能をもったコンタクトレンズもでてきています。
 夏に比べると、紫外線量も弱まってきているとはいえ、まだまだ油断は禁物です。



ストレスが原因に!?

 見ようとする中心部分が暗く感じる、色が違って見える、直線がゆがんで見えるなどの症状が、30〜40歳ころの男性に起こった場合、中心性漿液性網脈絡膜症という病気がまず考えられます。
 網膜の下には脈絡膜という膜があるのですが、この病気では、網膜の中心の黄斑部といわれるところで、脈絡膜側の水分が網膜下に漏れ出してきて水ぶくれを生じます。その結果、前記のような症状があらわれるのです。
 原因ははっきりわかっていないのですが、働き盛りの男性に過労、睡眠不足やストレスがたまったときに発症しやすい傾向があります。通常は片目に起こりますが、時期をずらして両目に起こることもあります。
 眼底検査で黄斑部に水ぶくれが発見され、この病気が疑われた場合、診断確定のために蛍光眼底造影という検査が行われます。腕の静脈に造影剤を注射し、それが眼球内に到達するときの様子を観察する検査です。この検査で、どこから脈絡膜側の水分が網膜下に漏れてきているのかを知ることができます。
 この中心性漿液性網脈絡膜症は、基本的には良性の病気で、3〜6ヶ月で自然治癒するケースが多いです。ただ、経過が長引いたり、再発を繰り返す症例では、レーザーによる治療を必要とすることもあります。



目からウロコ

 早いもので、1年も終わりに近づいてきました。今回は、ちょっと趣向を変えて、今年実際にあったちょっと面白い話をしてみようと思います。
あるとき、中年の男性が右目の異物感を訴え受診されました。目の中に何か入っているのかと調べてみましたが、何も見当たりません。「何もないようですが・・・」というと、「でも、実際に何か入っているみたいにコロコロするんですよ。」
 それではと、もう一度じっくりのぞいて見ると・・・ありました!無色透明で小さなプラスチック片のようなものが、結膜の隅っこに張り付いているではありませんか。「う〜ん、なんか魚のウロコみたいなものがありましたよ。」と私が言うと、「あっ、そういえば昨日釣りに行った後、魚をさばきました!」かくして、まずはめでたし、めでたし。『目からウロコ』とはよく言ったものです。
 このように、目の中に物が入って受診される方は、時折おられます。色がついていたり、目の表面に擦り傷ができていたりすると、入っている場所が予想しやすく、結構簡単に見つかるのですが、今回のように透明であったり、小さかったりすると、すぐには見つからないこともあります。たとえばソフトコンタクトレンズが目の中で破れた場合、その破片についても同じことがいえます。結膜は袋状になっているので、入ったものが目の裏まで入り込んで取れなくなることは決してありません。たいていの場合、涙と一緒に自然に出てくるので、しばらく様子を見ていても大丈夫なことがほとんどですが、充血や異物感が長く続くときは、念のため眼科医に相談されたほうがいいでしょう。


目の老化
 
新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお付き合いください。
さて、このお正月、たまっていた本を読んだり、テレビを見たりして過ごされる方も多いと思います。「どうも最近、細かい文字が読みにくくて・・・」「本を読んだ後、ふと目を上げてテレビ画面を見るとぼやけて見え、じっと見ているとだんだんはっきりしてくる。」などの症状に、心当たりはありませんか?
 そろそろ目の老化、すなわち“老眼”の始まりかもしれません。
 長年にわたり、高性能オートフォーカスカメラとして働いてくれたあなたの目も、40歳を過ぎたころから徐々に衰えが出てきます。誰でも白髪になるように、老眼も残念ながら避けて通ることはできません。
 ピント調整機能を備えたレンズである目の中の水晶体は、加齢とともに徐々に弾力性が失われ、硬くなっていきます。それに伴い調節できるピントの幅が狭くなり、光をより強く屈折させなければならない近くを見るときに、ピントが合いにくくなるのです。近視の人は老眼になりにくいと誤解されがちですが、眼鏡で遠くをよく見えるようにすると、そのままでは近くが見えずらいように、老眼は同じようにおとずれます。
 最近、アンチエイジングについて盛んに取り上げられていますが、残念ながら、まだ若返りの薬がないのと同じで、老眼を治す方法はありません。老眼をほうっておくと、目の疲れ、頭痛、肩こりなどの原因になることがあります。そんな場合は、その人の用途や度数にあった適切な老眼鏡をかけることによって、症状が緩和されることも珍しくはありません。




涙はいにしえの海

 目が乾燥してゴロゴロする、あるいは冷たい風に当たると突然涙があふれてくるなど、この季節、涙に関する訴えが多く見受けられます。そこで今回は、涙に関するお話をしようと思います。
 アニメで、魚が目をパチパチさせたり涙を流したりするシーンをよく見かけますが、実際にはさかなは瞬きもしないし、涙も流しません。その必要がないからです。生物は、海で誕生し、長い年月をかけて、すみかを陸地に移してきました。この間、エラは肺に、ヒレは手足にと、陸上生活に適した体に変化していきましたが、まぶたや、涙腺などの構造もそれにあわせて出現したものです。海の中では、海水に守られて、目の表面は絶えず潤っています。しかし陸上では、乾燥を防ぐための涙が必要になってくるというわけです。涙の成分が、原始の海の成分に似ているといわれていることも、興味深いです。
 そんな人の涙も、目の乾燥を防ぐ以外に、使われることがあります。そう、悲しいときやうれしいときに出てくる涙。こちらのほうは、なぜ出てくるのかはっきりわかっていません。しかし、涙は人間をより人間らしくしているといえるでしょう。
 いずれにせよ、涙はほんのわずかな量でありながら、日々分泌されては、出て行くという絶妙なバランスを保っています。このバランスが崩れたとき、最初に書いたような症状が出てくるのです。というわけで、次回は、この涙のバランスについてのお話をします。



涙があふれる

 じっとしていても涙がじわっとあふれてくる。そんな症状が特にお年を召した方に多いようです。 
 涙は、上まぶたにある“涙腺”というところで作られ、ごみを洗い流したり、ばい菌を殺したり、角膜に酸素を与えたりした後、目頭にある“涙点”というところから吸収され、涙小管、涙嚢、鼻涙管を通って鼻から喉の奥へと流れ出て行きます。当然涙の量が多すぎれば、目からあふれますし、逆に少なすぎれば、目の表面は乾燥してしまいます。つまり、絶妙なバランスの上に、涙は成り立っているわけです。
 このバランスをコントロールしているのは、涙点や涙小管・涙嚢による涙のポンプ排出機能です。まばたきによって、涙小管内が陰圧になり、目にたまっている涙を吸引することにより、涙の排出量をコントロールしています。加齢により目の周りの筋肉が緩んでくると、このポンプの力が弱くなって、出ていく涙の量が減ってしまうわけです。この場合、残念ながら症状を和らげる特効薬はありません。
 ただし、実際に涙道のどこかが詰まりかけている場合は、涙道を拡張したり、再建したりする手術によって症状が改善することがあります。赤ちゃんでは、生まれつき鼻涙管に薄い膜がはったまま生まれてくることがあり、必要に応じてブジーと呼ばれる針金のようなもので、膜を開通させます。その他、流れ出て行く涙の量は正常でも、結膜や角膜の病気で涙の分泌が増えている場合は、それらの病気の治療によって治ります。
 ひとことに「涙があふれる」といっても、その原因はさまざまというわけです。




花粉症によるアレルギー性結膜炎

 スギ花粉はようやく終息に向かいつつありほっと一息といいたいところですが、まだまだ油断はできません。アレルギーの原因となる物質は、ひとつとは限らないからです。
 「アレルギー」は、体内に入り込んだ抗原(アレルギーを引き起こすもとになるもの)に対し抗体が作られ、それが過剰に反応することによって引き起こされます。アレルギーの原因となるものは、春に飛散するスギ花粉が一番よく知られていますが、そのほかにも春から初夏にかけてはヒノキ、夏はイネ科のカモガヤ、秋にはブタクサ、ヨモギなどの花粉があげられます。また、1年を通してアレルギー症状が続くときは、ダニやハウスダストの影響も考えられます。アレルギーの原因を探るためには、血液検査をしたり、皮膚に原因と思われるものを入れて確認する方法があります。
 「いつになったら花粉症が出なくなりますか?」とよく聞かれますが、残念ながら1度できた抗体はなかなか消えず、またアレルギー反応を起こしやすい体質そのものは持って生まれたものなので、ある程度年齢が高くなり免疫能が低下するまでは、暮らしている環境が変わらない限り、なおりません。
 外出時にはマスクやめがねをしたり、帰宅後はうがいや洗顔、洋服のブラッシングをすること、症状に応じて抗アレルギー剤やときにはステロイドの点眼を行うことで、上手に乗り切っていくしかありません。



コンタクトを安全に使おう

 現在、コンタクトレンズ使用者の10人に1人が何らかのトラブルを抱えているといわれています。今回は安全に、また快適にコンタクトを使用していただけるようアドバイスをしたいと思います。
 コンタクトを初めて装用する人の9割が装用感の良さからソフトレンズを選んでいるようです。結膜炎などの発生率の低さから言うと、一番のお薦めは1日使い捨てタイプのソフトレンズです。続いて酸素透過性ハードレンズ、2週間交換のソフトレンズの順で安全性が高いといわれています。また、最近はシリコンによる酸素透過率のきわめて高いソフトコンタクトが発売開始となり、注目を集めています。
 安全に使うためにはレンズを毎日きれいに洗浄し、1日の使用時間をなるべく12時間以内に抑えること。また、コンタクトのみで眼鏡を持っていない人も時々おられますが、眼鏡は必ず1つ持っていてください。角膜に傷ができる、結膜炎になるなど、コンタクトレンズを中止して眼鏡に替えざるを得ないときが必ずあるからです。
 コンタクトをつけていると涙の蒸発量がふえ、またパソコンなどで目を使う時間が長いと、瞬きが少なくなり、さらに目が乾燥しやすくなります。ドライアイを防ぐために涙の代わりの目薬をレンズの上からこまめにさしてください。
 ただし、正しく使用していても、目が充血してなおらない、かゆみがある、いたみがある、目やにが増えたなどの症状が出てきたときは、すぐに中止して眼科医にご相談ください。



逆さまつげ

 学校検診の季節になりました。「逆さまつげ」との通知を手に、「どうしたらいいんでしょう。」と、たずねてこられる親御さんもおられます。今回はこの逆さまつげについてお話します。
逆さまつげには、厳密にいうと“眼瞼内反症”と“睫毛乱生症”のふたつがあります。眼瞼内反症とは、小さい子供によく見られる病気で、下まぶたがふっくらしているためにまつげが内側に入って目の表面にあたってしまうものです。多くの場合、3〜5歳頃になって頬のふくらみが少なくなるにつれて自然に治ってきます。
 逆さまつげは目に何も症状がなければ、そのまま放置しておいてかまいません。しかし、目がゴロゴロする、涙や目やにが増える、まぶしがる、などの症状があるときは、角膜炎や結膜炎を起こしている可能性がありますので、眼科を受診してください。症状によって点眼薬で経過をみますが、症状が強い場合や、角膜が濁って視力が落ちてきた場合には、手術を考慮します。手術には、皮膚を一部切除する方法と、まぶたに糸をかけるだけの方法があります。それぞれに、長所・短所がありますから、眼科で相談されるとよいでしょう。
 一方、睫毛乱生症は老人に多い病気で、数本の睫毛が目の方向に向かって折れ曲がってしまうものです。まぶたの炎症の後遺症として起こることが多く、抜いても毛根が残っているので、また生えてきます。毛根を電気分解する方法もありますが、残念ながら確実なものではありません。



光が見える

 「視野の中にキラキラした光が見える」と受診される方が時々おられます。この原因として最も多いのは、“後部硝子体剥離”とよばれる現象に伴う光視症です。眼球の中は硝子体という透明なゼリー状のもので満たされていますが、この硝子体が加齢とともに収縮し、網膜からはがれてくるのです。これに伴って、硝子体と癒着していた網膜が牽引され、光を感じるといわれています。この“後部硝子体剥離”が生じる前兆としての閃光や火花は、とくに暗いところで自覚しやすく、反復性で、持続時間は短く、いつも視野のほぼ同じところに出現します。黒いものが飛んで見える“飛蚊症”を伴うことが多いのも特徴です。
 その次に多い原因は、片頭痛に伴う閃輝暗点でしょう。片頭痛は20から40歳代の女性に多く見られる疾患で、脳血管の攣縮が原因と考えられています。多くの場合、まず視野の一部にキラキラした稲妻のようなものが見えて数分間続き、それがおさまった頃に頭痛が出現します。この症状は、両目ともほぼ同じところに見えたり、目を閉じても感じられたりします。まれに、明らかな頭痛を伴わない片頭痛もあるため、診断に苦慮することがあります。
 そのほか、網膜やぶどう膜、視神経の病気、まれに脳の病変でも、光が見えることがありますから、治療を必要とする病気が隠れていないかどうか、チェックすることが大切です。


緑内障は早期発見が大切

 “緑内障”ときくと、なにやら怖いイメージがあるようです。確かに緑内障は放置しておくと失明に至ることもある病気ではありますが、現在では治療法の進歩によって、非常に高い確率で、視覚障害の進行を防ぐことができるようになっています。ただし、それには「早期発見し、適切な治療を続けていれば」という条件がつきます。
 緑内障とは、眼圧(眼球の硬さ)が高かったり、たとえ眼圧が正常でも視神経が脆弱であるために、視神経の障害が進む病気です。症状としては、小さな視野欠損から始まり、徐々に視野障害が進んでくると最終的には視力低下をまねきます。ただし実際には両目でものを見て、視線も絶えず動いているため、初期の緑内障では、ほとんど自覚症状がありません。そこで検診が威力を発揮します。検診では眼圧を測ったり、眼底検査で視神経の状態を観察します。その結果、緑内障が疑われる人は視野検査をおこない、視野欠損がないかを確認します。
 治療としては、眼圧を低くコントロールすることが最も有効です。まず眼圧を下げるための目薬や飲み薬を開始し、それでも眼圧が十分に下がらなかったり、視野狭窄の進行が止まらない場合は、レーザー治療や手術療法が検討されます。
 緑内障は、残念ながら治療を開始してもすぐに目に見えてよくなる病気ではありません。そのため定期的な通院・治療から脱落していく方が多いのも事実です。一眼科医としては、皆さんにこの病気を正しく理解していただき、緑内障によって失明する方を少しでも減らしていけたら…と思っています。


お子さんが近視といわれたら

 お子さんが近視といわれたら、どうしますか?たいていの方は、眼科を受診して、眼鏡をかけるべきかどうか相談されるでしょう。私の診療所にもそういった方がたくさん来られますが、特にお子さんがまだ低学年であったりすると、本人だけでなく親御さんのほうにも、眼鏡をかけ始めることに抵抗感があるようです。
 近視は、遺伝要因と環境要因が組み合わさって出てくるといわれています。確かに両親が近視の子供は、近視になる確率が高いです。ただしそれだけでなく、読書が好きだったり、携帯ゲームをする時間が長い子供は、近視は進みやすくなります。
 近視の初期には、“仮性近視”という時期があるといわれています。近くを長く見続けることにより、眼の中の水晶体の厚さを調節している毛様体と呼ばれる筋肉が異常に緊張して起こると考えられています。この場合、一般に目薬や訓練によって毛様体の緊張をほぐす治療を行いますが、数ヶ月続けても効果がないときは、そろそろ眼鏡を考えたほうがよいでしょう。
 教室の後ろのほうの席から黒板を見るには、最低0.7の視力が必要ですから、それ以下になったら眼鏡を用意することをお勧めします。眼鏡をかけたりはずしたりすると目に悪いとか、眼鏡をかけ始めると近視がどんどん進んでいくとか心配される方もいますが、そんなことはありません。かけ始めは、授業中だけでかまいませんし、運動のときや通学の時は不自由がなければはずしていればよいのです。一般に中学生になったら、コンタクトレンズも選択肢の一つとなります。次回は、この眼鏡とコンタクトレンズの長所・短所について比較してみたいと思います。


めがね派? コンタクト派?

 視力の悪い人にとって、めがねやコンタクトレンズなどの視力矯正器具はかかせませんが、それぞれに長所・短所があり、それらを知った上で使い分けるのが賢い方法です。
めがねの良い点は、何よりもまずその簡便さがあげられます。テレビが見えにくいとき、新聞の文字がかすんで見えるとき、めがねをかけるだけで、驚くほどはっきり見えるのは多くの方が経験して知っているでしょう。また、眼球に直接のせるものではありませんから、眼を傷める心配もありません。その反面、視力が悪いのに容姿を気にしてめがねをかけたがらない人もいます。また、左右のレンズの度数が大きく異なる場合、めがねのレンズと角膜の間に一定の距離があるため、網膜に映る像の大きさに左右差が生じます。これらの像を脳でひとつに統合しようとすると、頭痛の原因となります。また、あまり度の強いレンズをかけると、レンズの端を視線が通るとき、ゆがみを感じてしまいます。
 その点、コンタクトレンズは、左右にどんなに差があっても、角膜に密着しているため像の大きさの差やゆがみを生じません。また、めがねでは、矯正しにくい強度の近視や不正乱視(角膜表面の不規則な凹凸による乱視)、円錐角膜(角膜の中央が出っ張ってくる病気)なども矯正できます。めがねのようにつけているのはわかりませんから、美容上の問題にもなりません。ただし、眼に直接のせるものですから、手入れを怠ると角膜を傷めますし、ひどいドライアイの方は装用できないという難点もあります。


角膜の病気

 「目にものが入って、涙がボロボロ」という経験はありませんか?
目は大変知覚が発達しているため、わずかな異物にも過剰に反応するのです。外からの侵入物に弱い、大変敏感な組織といえます。
 黒目の表面は、角膜という厚さわずか0.5mmほどの透明な膜でできていて、何層もの細胞が層状に並び、外気から直接酸素を取り込んでいます。また、一番外側の細胞はしっかりと固く結合していて、異物の侵入を防いでいます。何らかの原因で角膜に傷ができると、細胞は増殖し、傷ついた部分を修復しようとします。ただし、傷が治りきるまでに、細菌などに感染してしまうと、痛みがずっと続き、透明のはずの角膜が白く濁ってしまいます。
 角膜の感染症にはいろいろありますが、なかでも注目すべきなのが、アメーバ性角膜炎と、ヘルペス性角膜炎でしょう。アメーバ性角膜炎は、不適切なコンタクトレンズ装用によって生じる大変重篤な病気です。激しい痛みを伴い、薬が効きにくく、視力障害を残すこともあります。ヘルペス性角膜炎は、疲れやストレスが引き金になり、繰り返し再発する角膜炎で、何かとストレスの多い現代社会の産物ともいえるでしょう。
 不幸にして角膜が濁ってしまった場合、多くは元には戻りません。角膜移植が必要となる場合もあります。角膜移植は、移植治療の中でも大変歴史が長く成功率も高い手術です。しかし、残念ながら国内では十分な角膜が提供できておらず、一部海外に頼っているのが現状です。そのため、人工角膜の研究も盛んに行われています。


遺伝性の目の病気

 最近では、高血圧や糖尿病などさまざまな病気が、遺伝と関係があることがわかってきています。同じように、目の病気にも遺伝性の認められるものはたくさんあります。
 たとえば屈折異常。お父さんやお母さんが近視や遠視だと、その子供も同じように近視や遠視になることが多いです。斜視の中でも、間欠性外斜視(いつもはまっすぐ前を向いている目が、時々片方だけ外側を向くもの)と呼ばれるものは、遺伝しやすいといわれています。よく知られているところでは、色覚異常も遺伝による病気です。これは、X染色体劣性遺伝という形式をとるため、ほとんどが男性にみられます。女性は、遺伝子は持っているけれども症状がでない保因者となることが多いのです。
 そのほか、先天性白内障、一部の緑内障、網膜色素変性症という病気にも遺伝性が認められています。網膜色素変性症とは、視野が周辺から徐々に狭くなって、進行すると中心の視野だけ残すようになり、さらに進むと失明することもある病気です。多くの場合、20歳くらいまでに、まず夜盲を自覚するようになります。
 遺伝子診断とは、遺伝子を調べることによって、特定の遺伝子で発症することのわかっている病気に将来かかるかどうかを予測するものです。また、これらの遺伝子を操作することにより、その病気を予防したり治療したりすることが現在模索されています。遺伝性の病気は、治療が難しいものも多いのですが、これらの研究によって将来治療可能になることを、心から願います。



ザ・モード イン 眼の病気

 今回は、今年初めてということで、目の病気の最近の動向についてお話したいと思います。
ひと昔前の眼科では、結膜炎の治療として眼を洗ってばかりいた時代もあったそうですが、最近の眼科外来を受診される方の病気は実に多種多様です。
最近の眼の病気の注目株、上位3位をあげるとすれば、やはり@アレルギー性結膜炎 AIT眼症 B緑内障 でしょう。
花粉症が国民病とも呼ばれるようになった現在、アレルギー性結膜炎は小さなお子さんからお年寄りまで全世代を、季節を問わず1年中悩ませます。
IT眼症とは、コンピューターなどのOA機器を使うことで起きる、少し前までは見られなかった疾患のことです。TVゲーム、携帯メール、長時間のパソコン作業などが目の負担となり、眼の疲れ、肩こり、頭痛、ひどい場合は吐き気まで伴います。現代は目にとって非常に過酷な社会といえるでしょう。
3番目の緑内障。この病気は古くから今と変わらずに存在したのですが、気づかれぬまま一生を終える人が多かったのです。それが最近では病気の認識が深まり、検診による発見率が向上してきました。以前は失明にいたることも多かったのですが、良い薬がどんどん開発され、早期に発見できればある程度病気を抑制できるようになりました。
 さて、今年はいったいどんな病気が注目されるでしょう?



3つのコン

 ここ最近になって、眼の病気としてのドライアイが注目を浴びています。それには、「3つのコン」、すなわち@コンタクトレンズAパソコンBエアコンが大いに関係しています。この3つの「コン」が重なったとき、ドライアイはより悪化していくのです。
ソフトコンタクトレンズは水分を多く含み、眼の表面から涙を吸い取り蒸発させてしまいます。パソコン作業をしているときは、瞬きの回数が普段の約3分の1にまで減少するため、眼の表面が乾燥しやすくなります。エアコンが効きすぎていると、空気が乾燥して涙の蒸発が促進されます。
これらを防ぐには、まず含水率の低いコンタクトレンズを使用すること、パソコンの画面は瞼を大きく開かなくても作業が出来るようモニターを水平よりやや下めに設置すること、パソコン作業中は適度に休憩をはさむこと、エアコンを必要以上に効かせすぎないこと、エアコンの風が直接目にあたらないように風向きや座席の位置を工夫することなどです。
 ドライアイといっても、単に目が乾くだけではなく、目が疲れる、充血する、かすむ、しょぼしょぼするなど、実に症状は様々ですが、前記のような方法で症状が改善しないときは、治療が必要になります。
治療には、人工涙液の点眼や、ヒアルロン酸などの保湿剤の点眼、炎症を伴うときはステロイドの点眼を用いることもあります。最終的には涙点プラグといって、涙の出口を栓でふさいでしまう治療が必要になることもあります。


花粉症対策 

 今年も花粉症の季節がやってきました。花粉症によるアレルギー性結膜炎は季節性アレルギーの代表で、春や秋にピークを迎えます。一方、ハウスダストやダニによるアレルギーは季節に関係なく1年中現れるので、通年性アレルギーと呼ばれます。
 かゆみ、充血、めやになどのアレルギー性結膜炎の症状は、大変つらいものです。毎年同じ時期にこのような症状があらわれる方は、花粉の飛散開始の約2週間前から、抗アレルギー点眼薬を使用することにより、ピーク時の症状を緩和したり遅らせたりすることができます。
抗アレルギー点眼薬だけで症状が治まらないときは、ステロイド点眼薬を併用することになります。ただし、ステロイド点眼薬には、眼圧を上昇させる副作用があり、緑内障を引き起こすこともあるので使用には注意が必要です。ステロイドによる眼圧上昇は通常可逆的なので、早期に発見し、点眼の中止や点眼回数を減らすことで回避できます。そのためステロイド点眼中は、定期的な眼圧チェックが不可欠です。
目に入り込んでしまった花粉を洗い流すには、人工涙液の頻回点眼がお勧めです。最近市販されているカップ式の洗浄器具は、眼周囲の皮膚についた花粉をかえって眼の表面に接触させることになり、あまりお勧めできません。
 またコンタクトレンズを使用されている方は、花粉の飛散時期にはできるだけコンタクトを中止しめがねに切り替えたほうがよいでしょう。花粉が眼の中に入り込みコンタクトレンズに付着するのを、防ぐことができます。


白内障の手術時期

 60歳代の方の約半数は白内障にかかっているといわれています。白内障と診断された患者さんから、「いつごろ手術を受けたらいいですか?」という質問をよく受けます。
手術の時期は、日常生活に不自由を感じるようになった時というのがひとつの目安です。「視力は0.8あるけれど、夜間車の運転がしにくくなったから手術を受けたい」「視力は0.2しかないけれど、家の中中心の生活なのでまだ手術したくない」というようにさまざまな患者さんがおられますが、どちらも間違いではありません。ひとりひとり職業も、趣味も生活習慣も異なるのですから、手術する時期も人それぞれなのです。
 白内障の手術は大変技術が進歩して、より安全に、驚くほど短い時間で行えるようになりました。しかし思わぬ合併症がおこり、術前より見えにくくなることも稀とはいえありえますし、術前にはめがねなしで見えていたものが、術後は屈折度が変化して、眼鏡をかけないと見えなくなることも起こりえます。また、本来のレンズは、近くのものを見るとき厚くなり、遠くのものを見るとき薄くなることによって調節をおこなっていますが、通常の人工のレンズには、まだ残念ながらこの機能はありません。
 ただ、あまりに進行した白内障を放置しておくと、レンズが硬くなって手術に手間取ったり、まれにレンズが溶け出して緑内障などの病気を併発することがあります。
 以上のことを踏まえて、主治医と相談しながら、自分の手術の必要性、視力改善の可能性についてよく納得、理解した上で、手術をうけられることをお勧めします。


心因性視力障害

 新しい学年が始まり、学校から視力低下の通知をもらってきたお子さんも多いようです。年々、近視の始まる年齢が低年齢化してきていますが、視力が低下するのは近視のためばかりではありません。
 小学2年生のAちゃん。学校の身体検査で視力低下を指摘され、来院されました。確かに視力は左右とも0.2しか見えていない。でも、おかしいなぁ。つい3ヶ月前受診したときは、1.2見えていたのに。よくよくお母さんに話を聞いてみると、新しい学年になってお友達関係でちょっと悩みがあるらしいとのこと。「大丈夫、そのうちまた見えるようになってくると思うよ。」と元気づけ経過を見ていると、学校へ行くのが楽しくなるにつれ、視力も元通り回復しました。
 小学1年のBくん。目の異常はどこにも無いのに、いくら眼鏡で矯正しても視力が出ません。隣にいるお母さんは、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いていて、B君にはあまりかまってあげられない様子。「目の良くなる目薬を毎日お母さんにさしてもらおうね。」と涙の代わりの目薬をわたして暗示療法を試みると、徐々に視力は戻ってきました。お母さんとのスキンシップが効を奏したのでしょう。
 このように、心の問題から視力が低下することも、小さなお子さんにはよくあることです。大切なのは、本人が見えにくいと嘘をついているわけではないということ、何らかの心のストレスを抱えている場合が多いこと、周囲がその原因をよみとって見守っていく必要があるということです。


プールの季節

 今年もプールの季節がやってきました。子供たちにとって大変楽しいプールですが、残念なことにプールの水を介して移る眼の病気があります。
 アデノウィルスの感染によって起こる“咽頭結膜熱(いわゆるプール熱)”という結膜炎です。
 ウィルスに感染してから発病するまで5〜7日の潜伏期間があり、その後目の充血とともに、目やにがたくさん出てきます。病名からわかるように、のどの痛みや発熱を伴い、風邪をひいたときのように全身がだるくなったり、下痢をしたりします。
 たいていの場合、発病から1〜2週間でよくなってきますが、その間はプールの水はもちろんのこと、眼をこすった手や触ったものを介してほかの人にうつることがあるので、なおるまで幼稚園や学校は休まなくてはなりません。プール熱のほかに、流行性角結膜炎(いわゆるはやり目)も夏に多く、大変人に移りやすい病気です。
 このような結膜炎は、たいていの場合後遺症を残さずに治りますが、まれに合併症がおきて視力に影響を残すこともあります。
 結膜炎の途中で新たな細菌に感染してしまう混合感染や、結膜炎が治ったころに起こる角膜の混濁、結膜に強い炎症が起きたために治ったあとも涙の分泌が減ってしまうドライアイなどです。
 こういった合併症をひきおこさないためにも、ひどい充血、めやにが続くときは、早めに眼科医に相談したほうがよいでしょう。
 


目の色いろいろ

 人種によって、肌や髪の毛の色が違うように目の色もさまざまです。私たち日本人の目は茶褐色ですが、外国人の中には青・緑・グレー・茶色の人もいます。どうして目の色は人によって違うのでしょうか?
 私たちの目には、目の中に入ってくる光の量を調節する「虹彩」という部分があります。この虹彩の色の違いが目の色の違いなのです。虹彩の色は「メラニン色素」(よく日焼けの話題ででてくるあれです)と呼ばれる褐色の色素の量で決まります。メラニン色素は髪の毛にも関係していて、日本人はこのメラニン色素が多いので、目も黒く、髪も黒い人が多いのです。もし、目(虹彩)に全く色素がないと血管が透けて見えるため赤い眼になります。ウサギの目が赤いのはそのためです。
 このメラニン色素は、肌の表面や目に多く存在し、太陽光線に含まれる有害な紫外線から肌や目を守る役目を果たしています。赤道近くのアフリカ系の人の目は黒い濃い色をしており、もっと北に暮らすヨーロッパ系の人の目が青いのは、環境に適応して目が発達してきたためでしょう。ただし、メラニン色素の量が少ない白人は、虹彩の色が薄いために光をよりまぶしく感じてしまいます。西洋人がサングラスを好んでかけるのは、そういうわけでもあります。
 またこの虹彩の模様は人によってさまざまで、指紋と同じく、個人を判別することができ、現在その研究やセキュリティー面での活用が進められているのはご存知のとおりです。


目の奥の痛み

 私たち眼科医を悩ませる訴えに、「目の奥の痛み」があります。もちろん目の病気から起こる場合も多いのですが、眼以外の原因で起こる場合もあるからです。
診断のためにはまず患者さんに、痛みの範囲、痛みの種類(重い痛み、さすような痛み、ピリピリするような痛みなど)、痛みの起こり方(急性か慢性か)、持続時間、随伴症状などをお伺いします。
 目の奥の痛みの原因となる目の病気には、緑内障、眼球または眼球周囲の炎症、眼精疲労、ドライアイ、帯状疱疹などたくさんあります。これらは、眼科医の守備範囲とも言える範疇ですが、それよりも多いのは片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛などの頭痛に伴うものです。それぞれに特徴的な前兆、誘因、随伴症状などが見受けられます。また、ストレス、過労、不眠などの噴出し口として現れる場合もあるといったことも、診断を難しくしている要因だと思います。
 なんといっても緊急性が高いのは、動脈瘤、くも膜下出血です。この場合は、「何月何日何時に○○をしているときに起こった」といった具合に発症日時がはっきりしているのが特徴で、多くの場合、今までに経験したことの無いような痛みと表現されます。瞳孔不同や複視、眼瞼下垂を伴うこともあります。少しでも疑わしい場合は、脳神経外科にコンサルトし、至急MRIやMRAなどの画像診断を行う必要があるのです。
 


次世代のコンタクトレンズ

 いまや、多くの人が愛用している便利なコンタクトレンズですが、初めてコンタクトレンズの原理を考え出したのは、かのレオナルド・ダ・ビンチであったといわれています。19世紀末には眼の表面をすっぽりと覆う固いガラスのレンズが登場しましたが、大きくて酸素も通さなかったため到底長時間装用できる代物ではありませんでした。
 そして、1940年代に初めて今でいうハードコンタクトレンズが実用化され、その後酸素を透過するレンズの開発が進められました。
 1955年ごろソフトコンタクトレンズが登場し、材質的にやわらかく装用感がよいことから、普及率が飛躍的に高まり、その後は眼に対する安全性の面から、使い捨てのソフトコンタクトレンズへと主流が移ってきました。
 いうなれば、ハードコンタクトレンズは第1世代のレンズ、従来のソフトレンズは第2世代のレンズといえるでしょう。
そしてつい先ごろ第3の世代ともいえるコンタクトレンズが登場しました。
 それは、シリコンハイドロゲルコンタクトレンズといって、一見従来のソフトコンタクトレンズと大差ないように見えるのですが、実際にはその素材の持つガス透過性、乾燥のしにくさは全く違う次元にあるといっても過言ではありません。特に長時間装用する人や充血しやすい人にとっては朗報と言えるでしょう。
 ただ、素材の特性上、油性の汚れが付きやすいといった欠点もあります。手洗いの励行、化粧やハンドクリーム使用時の注意、洗浄液によるこすり洗いが大変大切になってきます。


本当にドライアイ?

 「ショボショボして目が開きにくい」「まぶしい」「眼が乾いて充血する」など、一見ドライアイのような症状。ただし、ドライアイの治療を行っても症状が改善しないとき、もしかしたらドライアイではないのかもしれません。
 実際、「ドライアイで困っています。」と眼科を受診される患者さんの半数は実は他の病気であるともいわれています。
 たとえばアレルギー性結膜炎ですが、かゆみはそれほど強くないのに、異物感がひどい場合もあり、ドライアイとまぎらわしいことがあります。また隠れた遠視や、コンタクトレンズなどの過矯正による眼精疲労でも、ドライアイと似た症状が現れます。
 もうひとつ忘れてはいけない大切な病気があります。「眼瞼痙攣」。眼瞼痙攣といっても必ずしも瞼の痙攣は伴いません。症状は目に現れますが、原因は目やまぶたにあるのではなく、脳内から正しい指令が伝わらず、目の開閉がうまく機能しなくなる病気です。
 50〜70歳代の女性に多く、初期には「まぶしい」「目がしょぼしょぼする」といった一見ドライアイと思われるような症状から始まり、進行すると自分の意思で目を開けようとしても開けられなくなり、手を使ってでないと開けられなくなります。
 治療に関しては、筋弛緩薬、抗てんかん薬、抗不安薬などの内服薬で改善しない場合は、ボツリヌス療法といって、緊張している筋肉に緊張をやわらげる薬を注射することで
改善する場合もあります。


視力表のCの意味

 視力表で使われている、アルファベットのCのようなマーク。だれでも1度は見たことがありますよね。このマーク、ランドルト環といって、世界共通の視力検査用の記号なのです。
 その大きさは正確に決められていて、たとえば視力表の1.0にあたるランドルト環は、直径7.5mm、太さ1.5mm、切れ目の幅1.5mmのC。この切れ目の向きを5m離れた位置から判別できる視力が、1.0なのです。ちなみに、視力0.5用のランドルト環の大きさは1.0用の2倍、0.2用は5倍、視力表の1番上にある0.1用は10倍の大きさになっています。
 視力には、裸眼視力と、眼鏡をかけたときの最高視力すなわち矯正視力とがあります。一般に「目が悪くなった」という場合は裸眼視力をさしますが、目にとって大切なのはむしろ矯正視力の方で、矯正視力が悪いということは、屈折異常だけではなく、白内障や緑内障、黄斑変性症など、何らかの目の病気が隠されている可能性が高いのです。
 ところで、視力測定にランドルト環を使用するのは人間だけですが、そのほかの動物の視力も様々な方法で研究されています。動物の中でもっとも視力の良いのは猛禽類のワシやタカで、はるか上空から地上の小さな獲物を狙って狩りをするのに適しています。夜行性の猫の視力は0.2程度と言われていますが、暗いところでは光に対する感度が優れていますし、昆虫の複眼は動いているものを見やすいようにできています。このようにそれぞれの生活に適応して発達した視力、とても興味深いものがありますね。



緑内障 Q&A

 緑内障は目の圧力で視神経が傷み、視野が狭くなっていく病気です。今回はその緑内障についてよく受ける質問にお答えします。
Q1.目を使いすぎると緑内障は進行しますか?
A1.目を酷使すると緑内障が進行するということはありません。ただし、緑内障のタイプによっては薄暗いところで細かいものを見続ける作業などを行うと眼圧があがることがあります。
Q2.眼圧が高いと必ず緑内障になりますか?
A2.眼圧の正常域は10〜21mmHgです。これ以上の眼圧で、視野や視神経に異常を認めない方を「高眼圧症」とよびます。高眼圧症の方が将来緑内障を発症する確率は、5年後に約10%といわれています。逆に言えば、90%の方は無治療でも緑内障にはならないのです。眼圧を下げる治療を行うべきかどうかは、年齢や眼圧の高さ、視神経乳頭の所見、角膜の厚さなどを総合的に見て判断します。
Q3.風邪薬などに「緑内障の人は服用に注意すること」とありますが・・・
A3.緑内障の種類によっては注意が必要ですが、きちんとした治療を受けていればほとんどの方は心配ありません。気になる方は主治医に御相談ください。
緑内障は、進行が非常にゆっくりで自分では気づかないうちに悪化していることもありますから、定期的な眼科受診と治療の継続がかかせません。病気をしっかりと理解して向きあっていくことが何よりも大切です。


花粉症が治らない!?

 この時期、『目がかゆい』といって受診される患者さんが増えています。そう、いわゆる花粉症です。今年は花粉の飛散量が例年の2〜3倍といわれているだけあって、症状もより悪化している方が多いようです。
 毎年同じ時期になると決まって花粉症になる、または原因となる花粉の種類がわかっている場合は、初期療法といって、花粉が飛び始める2週間ほど前から治療を開始し、症状が出るのを遅らせたり、ピーク時の症状を軽くする方法もあります。この場合、抗アレルギー点眼薬といってアレルギー症状を起こしにくくさせる目薬を使います。
 それでも不幸にしてアレルギー性結膜炎が重症化してしまった場合は、短期間だけステロイドを使用します。これらの治療を行ってもアレルギー性結膜炎の症状がなかなかよくならないときは、原因として、ドライアイ、アトピー性皮膚炎、コンタクトレンズ使用などが考えられます。
 ドライアイがあると、原因となっている物質が涙で洗い流されることなく、目の表面に長くとどまります。アトピー性皮膚炎があると、目の中だけでなく目の周りもかゆいため、どうしても強くこすってしまい、さらに症状が悪化させてしまうケースがあります。コンタクトレンズを入れると、涙の循環が悪くなり花粉が目の中に残りやすく、またレンズの表面に付着してさらに症状を悪化させます。この時期は、なるべくコンタクトは中止して眼鏡で過ごす、どうしても中止できない場合は1日使い捨てタイプのコンタクトレンズに替えるといった配慮が必要です。